図1:ミリ波ローカル5Gソフトウェア定義無線システムのアーキテクチャ
出典:原田研究室 – https://www.dco.cce.i.kyoto-u.ac.jp/en/PL/PL_2024_08.html
5G NRの進展および6G時代の到来により、無線通信システムはより高い周波数帯、特にミリ波(mmWave)帯域へと移行しています。これらの高周波数帯は広帯域を提供する一方で、伝搬損失、信号の指向性制御、スペクトルの効率的な利用といった重要な課題も抱えています。
1. 深刻な信号減衰
a. ミリ波信号の波長が短いため、障害物を通過する浸透力が限られます。
b. 距離に応じて大きなパスロスが発生し、非見通し(NLOS)環境での通信安定性が低下します。
2. 高精度なビーム制御の必要性
a. 5G NRシステムでは、指向性リンクを維持するためにリアルタイムのビームアライメントが求められます。
b. モビリティや動的なカバレッジをサポートするには、先進的なビームトラッキングが不可欠です。
3. OOBEによるスペクトル効率の制限
a. 5G標準の波形であるCP-OFDMは、帯域外放射(OOBE)を引き起こし、隣接チャネルに影響を及ぼします。
b. OOBEを抑制し、スペクトル使用効率を向上させるために、UTW-OFDMのような新しい波形処理が必要です。
4. ミリ波テストの高コストと複雑性
a. 従来のミリ波機器は大型で高価であり、反復的な研究に適していません。
b. スマートシティ、自動運転、産業用プライベート5Gなどのアプリケーションを支援するには、モジュール式でソフトウェア統合されたテストプラットフォームが必要です。
これらの課題に対応するため、研究チームは以下を含む完全なミリ波ローカル5Gシステムを開発しました:コアネットワーク(5GC)、基地局(gNB)、ユーザー機器(UE)
図2:開発されたミリ波ローカル5Gソフトウェア無線システム(左:基地局(gNB)およびコアネットワーク(5GC)、右:端末(UE)
出典:原田研究室 – https://www.dco.cce.i.kyoto-u.ac.jp/en/PL/PL_2024_08.html
本システムは、ソフトウェア無線(SDR)技術と TMYTEK のミリ波 RF フロントエンドを統合し、柔軟な実験および検証を可能にしています。
柔軟性が高く、スケーラブルで、コスト効率に優れたミリ波テストプラットフォームを実現するために、研究チームは OpenAirInterface(OAI)のオープンソース5Gソフトウェアを採用し、TMYTEKの 5G テストベッドである BBox および UD Box モジュールと統合しました。これにより、従来のミリ波プラットフォームの制限を克服しました。
両デバイスにはオープン API が搭載されており、Python、LabVIEW、MATLAB、C++ に対応。5G 研究者にとってスムーズな統合と開発サイクルの短縮を実現します。
図3:開発されたシステムの概要
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本システムは、ビームアライメント、スループット性能、およびスペクトル効率を評価するために、制御された環境下でテストされました。 評価には、標準波形である CP-OFDM と、新たに提案された UTW-OFDM(Ultra-Time Window OFDM)の両方が使用されました。
CP-OFDM に内在する帯域外放射(OOBE)を抑制するために、研究チームは UTW-OFDM を開発しました。
UTW-OFDM方式の概要
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環境: 無響室
距離: 基地局(BS)と端末(UE)の間に9メートル
帯域幅: 50 MHz
図4:基地局および端末におけるアンテナ指向性とデータレートの関係(上:基地局送信アンテナビームの指向性/下:端末受信アンテナビームの指向性)
出典:原田研究室 – https://www.dco.cce.i.kyoto-u.ac.jp/en/PL/PL_2024_08.html
研究チームの実装により、TMYTEKの5G/6Gテストベッド(BBoxおよびUD Boxモジュール)が以下の点で効果的であることが実証されました:
モジュール型ハードウェアとオープンソースのSDRソフトウェアを統合することで、原田研究室は将来の通信ニーズに対応可能なミリ波5Gシステムの検証に成功しました。 TMYTEKの貢献は、次世代無線技術の研究を加速するスケーラブルなテスト環境の実現において極めて重要でした。